中西研大郎 インタビュー

21世紀美術館の中庭に、ガラスの廊下をまたぐように制作されたパトリック・ブランの展示作品。金沢の気候に適した約100種類もの植物が植えられ、四季折々の表情が楽しめます。この施工からメンテナンスまで、一手に引き受けてきたのが中西研大郎さんです。

東京農業大学で環境工学を専攻後金沢に戻り、お父様が創業された園芸店「四緑園」を引き継がれました。2015年にご自身で「芸藝(うんげい)」を設立。現在、豊富な植栽知識をいかした植物の仕事に加えて、セレクトショップ「[g]ift(ギフト)」の運営等、多方面でお仕事を展開されています。 今夏、ボタニカルショップ「[g]love(グローブ)」とカフェギャラリー「garten(ガルテン)」を兼六坂の中ほどにオープンなさいました。

ひなや本社(京都)の「緑の壁」で長年お世話になっている中西さんにお話をうかがいます。

Q. 現在のお仕事についてお聞かせください。

A. 芸藝という会社を作ったとき、名刺に「文化を育てる人を育てる。」というコピーを入れました。私は、文化は多様であることが豊かさだと思っています。地方独特の産物が消えていく状況でも、最後の1社くらいになると生存者利益で意外と生き残れます。

けれども、一分野に一つしか選択肢がないのでは、文化としては貧しい。そういう状況では各々が細かい好みにこだわることは出来ませんし、好みに合ったものが見つからなければ、その人はその文化自体を否定してしまうかもしれません。そういった人が大勢いれば、その文化は貧しいままです。

それは仕方のない事かもしれませんが、残って欲しいものもあります。自分が残したいものに関わってきた結果、現在の仕事の形態に行きついたといったところです。

「流行とは一線を画し、本質を求める人のために守っていきたい」

Q. 「緑の壁」とは何でしょう?

A. 壁面緑化のことです。15年前はまだ一般的ではなくて「ヘキメンリョクカ?」とよく聞き返されました。“緑の壁”はもっと伝わりませんでしたが(笑)。

壁面緑化という響きはやや硬いので、もう少し親しみのある別の名前を付けようと、「緑の壁」と呼んでいます。

Q.美術館の他にショップやオフィス、専門学校、病院、個人宅でも設置されています。これからも増えそうですね?

A. 他の壁面緑化の方が向いている案件と判断すればそちらを提案します。そうすると一番費用がかからない会社が受注します。これはうちの緑の壁がベストだな、という時にだけお受けするようにしています。ですから、そんなに増えていくとは思いませんが、良い出会いを期待しつつ日々仕事をしています。

「ここで出会った商品のつくり手に会いに行くような、北陸の旅のはじまりの場所にもなってほしい」

920-0962

石川県金沢市広坂1-2-18 中村ビル 1F

Tel: 076-222-2126

Q. [g]iftではどういったお客様を念頭に品揃えされていますか?

A. 60代のお母さんと30代の娘さんの二人組をイメージしています。ターゲットというわけではありませんが、この組み合わせだと友人や同僚の方、他の家族という要素でみると、ほとんどの世代、性別を網羅できます。ですから、スタッフと話していてもイメージのブレがあまりありません。

Q.お店をなさって、新幹線開通の影響は感じますか?

A. [g]iftは新幹線開業に向けてオープンしたので、開通前のデータがほとんどありません。ですから、前後を比較しがたいのですが、明らかに外国人が増えました。これは全国的な傾向だとは思いますが、新幹線が無ければ金沢にこれほど外国人が訪れなかったと思います。

Q. 金沢についてうかがいます。ここは変わって欲しいな、というところはありますか?

A. 嫌なところだらけなので、ほとんど全部変わって欲しいくらいです。「中西さんは金沢愛が強いですよ」と伊豆蔵さん(ひなや)によく言われますから、意外だと思われるかもしれませんが。でも、好きなところだらけっていうのは恋してる段階で、嫌なところばっかりだけどっていうのが愛だったりしますよね(笑)。

Q.逆に、変わらないで欲しいところは?

A. 食の分野では、個人経営の良いお店がたくさんあります。食が高水準、かつ多様という点は変わって欲しくないですね。

珈琲・工芸・景色を楽しめるスペース「garten(ガルテン)」

920-0933

石川県金沢市東兼六町1-26

Tel: 076-282-9114

Q. gartenについてうかがいます。この場所を選ばれた理由を教えてください。

A. 「兼六園の近くで、景色が良くて、ある程度交通量がある場所」を希望していましたが、そんな都合のいい場所あるわけないだろと、あまり期待していませんでした。ところが売却の広告が偶然目に留まり、現地で景色を見て即決しました。

あるはずないと思っていたものが目の前にあるのに、ここで手を出さなかったら一生悔いると思ったので迷いませんでした。

Q.ボタニカルショップ、ギャラリー、カフェを展開される予定とうかがっています。

A. 期待が膨らみすぎて、私も正直よくわかりません(笑)。ただ、ある種の感性の高さをウリにしているという点は意識しています。人は良いものにも悪いものにも慣れていきますが、感性を高めるには良いものに慣れることが必要です。

gartenは私自身、そして社員の感性を高める場です。こういった場を社内で独占するのではなく、変な言い方かもしれませんが「景色のお裾分け」みたいな気持ちで、もっとオープンにシェアしたいと思ってgartenを作りました。ですから、そういう価値観を共有できる人との出会いがあるような場にしたいですね。

 

*当面、不定休での営業となります。ご来訪の際は事前に電話(076-282-9114)でご確認を願います。